「銀河鉄道の夜を思いだすよ」と言われたパンフレットの写真

学校の入学案内パンフレットの撮影をして

数年前に撮影をした学校の入学案内パンフレットの撮影が今でも心に残っています。
その撮影は初めて伺う学校で初めて仕事を一緒にさせていただく広告会社の方との仕事だったのです。なので僕も相手方も手探りのようなところがありました。何度かに渡って学校に行き、学校としては、どのようなパンフレットにしたいのかを直接校長先生にお聞きし、(なんなら先生の理想の未来まで尋ねてみたりして。。)それを持って広告会社の方はどのような仕上げを見ているのか?そんな事を僕は頭に入れながら、自分なりにどのような写真を撮って行けるかを想像しつつ、学校の雰囲気や周辺の環境などを見てまわりました。
何度目かの学校へ伺った時の事、ビオトープを学校のクラブにしているという話を聞きました。そして、そこを何とかパンフレットに使いたいという事を広告会社の方が言っていたので、その場所に向かったのです。
そこは今の日本ではほとんど見る事のできない電柱の立っていない里山でした。
一目見て、ここは良い所だと思える場所です。
ここで子供達が自然と戯れながら学ぶわけです。
どんな絵になるのか?瞬く間に妄想が膨らみ始めます。
どんな生徒達がこのビオトープに来るのだろう?どのようにして生徒達はここに居るのだろう?風の音と鳥のさえずりだけが聞こえてくるこの場所で。

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パンフレットの撮影は学校の授業や先生、生徒達、その他のクラブなどの撮影も当然行われ、最後にこのビオトープに行きました。
僕は撮影の当日に1人で少し早めに学校に到着して、ビオトープのあるこの里山に行きました。もう一度、この場所を肌で感じておきたかったのが一つと、個人的にこの場所を眺めていたいという思いがあったからです。
撮影は四月に行われました。麗らかな日差しの中で春を待っていた花々が咲き、そこにチョウチョや虫達が戯れて、優しく風が吹きく、そんな景色を何も考えずにぼうっと眺めていると、後ろから自転車に乗ったお爺さんが通り過ぎていきました。
「長閑」そのものの景色でした。
そんな景色を胸いっぱいに吸い込んで撮影に向かい、そして最後のビオトープの撮影となったのです。
クラブの生徒や先生達とは校舎から一緒に歩いて向かう事になっていました。現れた生徒達は皆元気に話をして笑って跳ねるように歩いていきます。
僕も何かテキトウな事を話をしたように感じますが、あまり憶えていません。
ただ、皆と一緒にあの電柱の無い里山の景色に向かった柔らかい時間だけが記憶にあります。

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さて、その場に辿り着き、彼らは何をするのだろう?と僕はまず彼らの行動を観察をしていました。僕の中では、少しだけ「まぁ現代の子だから」という色眼鏡があったのは間違い無く、泥や虫にキャーキャーと言うだけの状態も覚悟はしていました。
すると、キャーキャーはあったのですが、全く良い方向に彼ら裏切ってくれました。
女の子が手のひらに小さなカエルも持ってやって来たのです。
女の子の笑顔とカエルがキラキラと光って見えました。僕が子供の頃は当たり前の景色でした。でも今は虫を持てない子供達がたくさん居るのです。

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他の生き物達と普通に接し笑顔で遊ぶ彼らは、まさに健康という言葉がピッタリ来る姿を僕に見せてくれました。
学ぶとは、このような事なのだろうと思わせます。
規定の路線では学べない意外性が自然には満載です。
そこで経験と智慧を学ぶ、生きる事の本質は、こんなところから学ぶのでは無いか?と思います。
今の世の中は国から与えられた教科書を憶えないと良い就職ができない仕組みになっているようですが、それはお金を得るためのものであって本質的な生きるとは関係の無い事であったりすると感じます。
もちろん、お金が無いと生きていけない世の中になっては居るのですが。
でも、と僕は思いました。
生きていく事がキラキラと輝くためには、必要な事がある。
それは生きている実感なのでは無いだろうか?と。

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彼らは田んぼの畦道を踊るように歩きます。木々や草花の緑色と大地の茶色と空の青色の中に彼らの笑い声が聞こえてきます。
先生と生徒が共に歩き、供に学ぶような姿は美しく、元気で、優しかったです。
この写真はパンフレットの裏表紙を飾りました。(僕としては表紙で良いだろう。と思ったのですが、どうやら大人の戦略があったみたいです。(苦笑))
写真を見て、校長先生がこのように言ってくれました。
この写真は「大きくして校長室に飾るよ。まるで銀河鉄道の夜を思いだすようだよ。」と。
とても嬉しい言葉でした。自分の撮った写真に宮沢賢治の世界を投影していただけるなんて。

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※ フォトイズディスカバリーのパンフレットのページで他の写真も紹介しています。

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