アルバムを作る

フリーランスのカメラマンとして結婚式の写真を撮るようになって、最初に考えなければいけないと思ったのがアルバムでした。
今から15年以上前の事なので、当時は全てのカメラマンがフィルムで撮影している時代で、デジタルカメラはまだ、プロの機材としては使えない時代でしたので、今のようなデジタルアルバムは当然存在していませんでした。
それどころかアルバムの種類そのものが、あまり無く、自分で考える以外に道は無いような状況でした。なので多くの独立系の事務所では撮るだけでアルバムは無い撮影プランが多かったと思います。
それでもフィルムの時代は全ての写真をプリントする同時プリントという形式で現像をしていたので、形として写真がプリントされて残っていたのです。

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ただ、僕は撮影した数百カットの写真を、どうしても編集してお客さんに、お渡しした方が良いと考えていました。
当時の納品の状態は撮影をした全ネガフィルムと全カットのプリントをファイル形式のアルバムに挿入して、お渡ししていました。
そのファイル形式のアルバムは全カットを時系列に並べなおして挿入してあります。でも同じ大きさの写真が見開きに最低でも6枚、多ければ20枚近くが並ぶ状態です。目の前にたくさんの写真が一気に並ぶと、写真を見ているようで見ていないような、一枚一枚を見るというよりはページを見ているような、流されて行ってしまう感じがします。

そんな状態だと、たとえ良いなと自分でも思う写真があったとしても、どこか気が付かないで通り過ぎるような・・・。
そんな気がして、やはりちゃんと見てもらえるような提案の仕方は重要だなと思いました。

そこで、どんなアルバムが良いだろうと考えました。
たくさんのお店に行ってアルバムや写真集を見て回りました。
でも、なかなかこれだ!というアルバムには出会いませんでした。
どうしたら良いものか?と思いながらも撮影だけは写真事務所などに所属しながら進めていました。そんな中でお客さんから、たまに聞く言葉がありました。

「結婚式の写真やビデオなんて、その時だけしか見ないから。」

なるほどな、と。その写真を撮っている人間からしてみると少し頭に来る言葉ではあったのですが、そう思われているのも事実なのだと・・・。
そこで写真も何年経っても見てもらえる写真であるのは当然の事ながら、アルバムも何十年経っても開いてもらえるアルバムにしなければ、そんな気持が心の中に持ち上がってきました。
そんな事を日々考えていたある日に実家に帰った時、自分の親が作ってくれた生い立ちアルバムを見たのです。
それはすでに40年近くの時を経ていました。
台紙に直に写真を貼付ける形のアルバムで文字は万年筆で書かれていました。例えば「時尚0才、はじめてのおさんぽ」みたいな感じです。
40年の歳月を経たアルバムは台紙も黄ばみ、写真も色が褪せていました。青いインクで書いた万年筆の文字も少し薄くなっています。
でも、まったくそれが嫌では無いのですね。逆にその劣化が劣るのでは無く歳月が良さとなり褪せた色々なものが味になっていると感じたのです。もちろん親の気持もあるのですが・・。

そこで僕は写真を台紙に直に貼付けるタイプのアルバムにする事としました。
そして台紙の色は白(少しクリームがかった)にしました。本当は写真映えするには台紙は黒などの落ち込んだ色の方が良いのですが、50年先のこのアルバムを想像しました。
50年先、今の新郎新婦に孫ができて、孫がお爺ちゃんお婆ちゃんの結婚式のアルバムを見る時を想像しました。それはアルバム自身の歳の取り方を想像したのです。
ならば黒い台紙より白い台紙が良いだろうと思ったのです。それは昔の白黒写真が経年劣化でセピア色になるのと同じようなイメージです。

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それと、文字でした。
僕のアルバムは英語で書かれた文字は「手書き」なのです。
生い立ちアルバムはやはり親の文字も良かったのです。それは写真の意味を現していたり親の目線を感じさせたりするものであるのですが、「飾り」としても効果を持っていました。
まさか、僕が日本語で万年筆で文字を書く事はできません。そこで英文の文字を入れる事としました。
(もちろん英文の意味は写真に何となく合ったBGM程度の内容です)
当初は印刷でも良いかな?と思ったのですが、印刷文字入のアルバムを製本屋さんに製本してもらう財力も無く(苦笑)自分で書く事に決めたのです。
ただ、当然の事ではあるのですがアルバムに直接文字を書くというのは大変な作業です。だからいつかは印刷と思っていました。しかし、文字を書く事にも慣れた頃、手書きであるから良い事のいくつかの理由が解ってきました。
それはアルバムのレイアウトが手書きだから自由にできるという事。
もう一つは味ですね。アナログの味があるのだなと、これはちゃんと文字を書けるようなってから感じたのですが。。

こうして僕の制作するアルバムはどこまでもアナログなアルバムとなり完成しました。
そして、このアルバムはもう10年以上デザインを変えずにずっと作り続けています。

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